受刑者と看守、不正の共謀
東京都府中市の府中刑務所で働いていた看守、野殿浩幹容疑者(31歳)と受刑者の有木健太容疑者(32歳)が覚せい剤取締法違反(所持など)の疑いで逮捕されました。2人はいずれも容疑を認めています。警視庁組織犯罪対策5課によると、野殿容疑者は有木容疑者からの依頼を受け、覚醒剤を入手して渡していたとのこと。
潜在的な腐敗、明らかに
野殿容疑者は2006年から府中刑務所で勤務し、主に独房の看守や施設の警備を担当していました。有木容疑者からの依頼を受けて覚醒剤を購入し、渡していたと野殿容疑者は供述しています。警視庁は現在、野殿容疑者が有木容疑者に日常的に不正な便宜を図っていた可能性を含めて動機を調査しています。
今年2月下旬、野殿容疑者は有木容疑者から「覚醒剤を買ってきてほしい」との依頼を受け、関西方面で覚醒剤を購入しました。有木容疑者は独房内で覚醒剤を使用し、残りの覚醒剤や注射針は野殿容疑者が回収して自宅に保管していたとのこと。
野殿容疑者は3月6日午後10時ごろ、上司と一緒に警視庁府中署に出頭した際に覚醒剤約0.36グラムを所持していた疑いがあります。一方、有木容疑者は2月下旬から3月7日ごろにかけて、府中刑務所内で微量の覚醒剤を使用していたとされています。
刑務所内の不祥事、過去の報告
過去にも、刑務所の職員が受刑者からの金品の提供や脅迫を受けて便宜を図った不祥事が度々明らかになっています。2009年10月には、名古屋刑務所の看守が男性受刑者の依頼に応じて手紙のやりとりの仲介や携帯電話の貸与を行い、その見返りに航空券を受け取っていました。この事案が発覚した後、名古屋刑務所は看守を懲戒免職処分にしました。
また、2007年には大阪拘置所と大阪刑務所で現金などの賄賂を受け取り、その見返りに受刑者に便宜を図った看守が逮捕されました。大阪拘置所の事件では、暴力団組長の求めに応じて監視カメラのない部屋に変更するなどの便宜を図っていたとされています。
府中刑務所長の横尾邦彦氏は「捜査中の事案であり、詳細は把握していないが、事実であれば断じて許されない行為。今後の捜査や当所の調査結果を踏まえ、厳正に対処する」と語りました。
また、法務省矯正局長の西田博氏は、「捜査に協力し、矯正局としても全容解明に努め、不適正な処遇の防止を図る」と述べました。